秋来たりなば

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生きていくのはなんと退屈なことか。
日々が、年月が単調にうちつづく。

今日は明日とおなじく、きのうは今日とおなじく。
あいかわらずのミルク色の雲、あいかわらずの灰色の日々。
同じ空、同じ音楽、同じ声、同じ街並みに、変わらない人の顔、顔、顔。

せまい露地のような生活。
古ぼけた家並み、平坦な屋根、コンクリートのくすんだ林。

ここは芝居小屋だった。
きのう、舞台には僕たちがいた。

幕があがると、観客の心は舞台のうえにある。

紳士淑女の皆さま、こちらでご覧にいれますのは、
消えてはまた現れる事物のことわり。
奥では用意万端ととのっております。
愛と誠の子ども劇
罪と悔いの罪人劇
それもすべてポケット・サイズで!

まじめで陽気なこれらの芝居、
苦いこともあれば、優しいこともある。
多くは、個人用、
その他は、家庭用。
なかには影芝居のようなものもあり、
世界の夜のように暗いが、
ほかのは楽しく快活で、
どれも、わずかな木戸銭で見物できる。

さて手前が鼻の穴からほんとうに卵を抜きだし、
シルクハットから生きたウサギを取り出した節には、
どうかなにとぞ、手前の手柄と信じてやっていただきたい!
ぶちこわし屋なぞ帰えうせろ!
そんな奴、博士帽かぶった悪魔にとっととさらわれるがよい
もちろんポケット・サイズで。

賢明なる紳士、麗しき淑女の皆さま、
宝石をもつほどに貧しくとも、物乞いするほど豊かであろうとも、
さあどうぞ、手前どものポケット・ドラマのなかへ!
これからただちに始まり、始まり。
皆さまがたの涙、皆さまがたの笑いこそ、
香具師にとっては最大の励み。
皆さまなしでは、手も足も出ない。
さあどうか、ポケット・シュピールのなかへ!

ブラボー!桟敷の客も平土間の客もご満悦。

役者たちの仕事は終わった。
僕らは制帽や造花の花束にひきずられて、箱のなかに投げこまれる。
店長はどれで、フリッツはどれで、老いたハムレットは?
誰に見わけがつこう?

明日、僕らはまた連れもどされるだろう。
くるくると回る退屈な回転木馬のように、日はまた日を追う。

どこが終わりで、どこが始まりなのか、きのうと今日の境目は?
まだ夏のつづきなのか、もう秋の初めなのか、芝居なのか、人生なのか。
僕らは知らない。誰が知ろう?
輪郭もなく、おわりもなく、はじめもない。

今はちょうどそんな具合だ。

おやすみ、また明日。
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by waraino-naikaku | 2011-09-06 20:21
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